はじめに：わが子の歯並び、なぜ悪くなったんだろう？

お子様の歯並びを見て、「これは私の顎が小さいから遺伝したのかな？」「それとも、うちの子の癖が悪かったのかな？」と疑問に感じている親御さんは少なくありません。

子どもの歯並びの問題は、見た目だけでなく、噛む機能、発音、そして将来の健康にも大きく影響します。

そのため、その原因を正しく理解し、適切なタイミングで対策を講じることが、後悔しない小児矯正治療の第一歩となります。

この記事では、子どもの歯並びが悪くなる原因を、遺伝的な要因と環境的・生活習慣的な要因に分け、それぞれの影響力と、親御さんが介入できる具体的な対策について、詳しく解説していきます。

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遺伝的な要因の力：避けられない骨格の影響

歯並びの悪さに遺伝が関与するのは、主に骨格（顎の大きさや形）の部分です。

これは、親から子へと受け継がれる設計図のようなもので、生活習慣では変えにくい領域です。

遺伝が強く関わる歯並びのタイプ

① 顎の大きさの不調和

顎の骨の大きさや形状は、親からの遺伝の影響を非常に強く受けます。

• 小顎症（顎が小さい）： 親が顎が小さい場合、子どもも顎が小さくなる傾向があります。永久歯が生えるスペースが不足し、歯がガタガタに生える叢生（そうせい）や、八重歯になる原因となります。

• 反対咬合（受け口）： 下顎が上顎よりも大きく前に出ているケースは、遺伝的な要因が強く影響します。両親のどちらか、または祖父母に受け口の方がいる場合、お子様にも受け継がれる可能性が高くなります。

② 上下の顎のズレ（骨格的な出っ歯や受け口）

上下の顎の骨の位置関係が前後や左右に大きくずれている場合（骨格性上顎前突や下顎前突）も、遺伝的な影響が大きいです。

遺伝性の問題への対策

遺伝的な問題は避けられませんが、早期に介入すること（一期治療）で、将来の抜歯矯正や外科手術のリスクを減らすことができます。

特に反対咬合（受け口）は、成長期に下顎の成長を抑制したり、上顎の成長を促したりする装置（ムーシールドやフェイシャルマスクなど）を早期に使用することで、骨格のズレを最小限に抑えることが重要です。

環境・生活習慣要因の力：親の介入が最も効果的な領域

遺伝が歯並びを悪くする原因の約3割程度であるのに対し、残りの約7割は、子どもの成長期の生活習慣や癖（環境要因）に起因すると言われています。

これらは「後天的な原因」であり、親御さんの気づきと対策によって改善が可能です。

顎の成長と歯並びを妨げる「4大悪習慣」

① 口呼吸と低位舌（ていいぜつ）

最も深刻な悪習慣の一つです。

• 口呼吸の影響： 本来、舌は上顎の天井（スポット）についているのが正しい位置ですが、口呼吸をしていると舌の位置が下がりっぱなしになります（低位舌）。

• 歯並びへの影響： 舌が上顎を内側から広げるという自然な成長刺激が得られなくなり、上顎が横に広がらずV字型に狭くなります。その結果、永久歯が生えるスペースがなくなり、歯並びがガタガタになります。

• 見た目の影響： 顎が後ろに下がり、顔が面長になるなど、見た目にも影響を及ぼします。

② 間違った嚥下（飲み込み）と舌癖

ものを飲み込む際に、舌を前に突き出して前歯を押す「異常嚥下癖（ぜんいんげんげき）」がある子どもは少なくありません。

• 歯並びへの影響： 飲み込むたびに前歯が押され続けるため、出っ歯（上顎前突）になったり、上下の歯に隙間ができる開咬（かいこう）になったりします。

③ 長期間の指しゃぶり・おしゃぶりの習慣

指しゃぶりは乳幼児期には自然な行為ですが、3歳以降も継続すると歯並びに悪影響を及ぼします。

• 歯並びへの影響： 指が前歯を継続的に押すことで、前歯が前突（出っ歯）し、上下の前歯が噛み合わなくなる開咬の原因となります。

④ 食事の時の咀嚼（そしゃく）不足

柔らかいものばかり食べていると、顎の骨に適切な刺激が伝わりません。特に昨今の食事は柔らかく食べやすいものが多い為子供の顎の骨の成長不足が懸念されています。

• 歯並びへの影響： 顎の骨は、噛むことによって成長が促されます。しっかり噛まない生活が続くと、顎の骨が十分に成長せず、小さくなってしまい、結果として永久歯のスペースが不足し、ガタガタの歯並び（叢生）を引き起こします。

 

環境要因への対策：MFT（口腔筋機能療法）

生活習慣が原因で歯並びが悪化している場合、矯正装置だけでなく、MFT（Myofunctional Therapy：口腔筋機能療法）というトレーニングが非常に有効です。

MFTは、舌や唇、頬など、歯並びに影響を与えるお口周りの筋肉の正しい使い方を習得する訓練です。

口呼吸から鼻呼吸へ、異常嚥下癖から正しい飲み込みへと導くことで、装置を外した後の「後戻り」を防ぐ効果も非常に高いです。

この訓練には様々な方法がありますが当院ではプレオルソを使用してお口周りの筋肉を鍛え、正常な状態に戻るようなアプローチも実施しています。

気になる方はご相談ください。

「遺伝」と「生活習慣」の複合的な関係

実際には、歯並びの問題は「遺伝100%」や「生活習慣100%」と単純に分けられることは少なく、両方が複合的に絡み合っているケースがほとんどです。

• 例1： 顎が小さい遺伝的な傾向があるが、さらに口呼吸の癖があるため、顎の成長が阻害され、ガタガタがより悪化する。

• 例2： 軽度の出っ歯の遺伝的な傾向があるが、長期間の指しゃぶりや舌癖が重なり、より重度の出っ歯（開咬を伴う）になる。

このように、遺伝的に不利な条件を持っていて、生活習慣が拍車をかけることでより悪化するケースが多いです。

逆に遺伝的にマイナスになる要因があったとしても生活習慣を改善することで、その悪影響を最小限に抑え、治療の難易度を下げることが十分に可能なのです。

親御さんが子供の歯並び改善に向けて今日からできること

歯並びの悪化を防ぎ、矯正治療を成功に導くために、親御さんがすぐに実践できることをまとめます。

1. 「噛む」習慣を意識する： 食材を少し大きめに切る、柔らかいものばかり与えない、よく噛むための時間を確保するなど、顎の成長を促す食事を意識する。

2. 口呼吸のチェックと改善： お子様が口を開けて寝ていないか、口がポカンと開いていないかチェックし、鼻呼吸の習慣を付けましょう。

3. MFTの導入： 舌癖や飲み込み方の癖に気づいたら、ご自身で色々とトライするのも良いですが、まず歯科医院で相談しましょう。

4. 早期の矯正相談： 「うちの子は遺伝だから仕方ない」と諦めず、5～9歳頃を目安に一度、歯科医院に相談する。

 

まとめ：歯並びは「環境」で変えられる！

子どもの歯並びは、遺伝によって方向付けられる部分はありますが、その最終的な形や、治療の難易度は、成長期の「生活習慣（環境）」によって大きく左右されます。

早期に専門家に相談し、適切な時期に適切な装置を使い、そして何より悪習癖を改善することで、お子様の顎はより理想的な成長を遂げることができます。

「遺伝だから仕方ない」と決めつけずに、まずはお子様の今の歯並びや癖について、私たち専門家にご相談ください。未来の健康と美しい笑顔は、親御さんの「気づき」から始まります。

奈良県香芝市で小児矯正をお考えであればよしむらファミリー歯科へご相談ください。

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